『いつのまにか』


いつのまにか 歩き出していた


いつのまにか 夢中になっていた


いつのまにか 夕暮れになっていて


いつのまにか 君とも逢えなくなっていた


いつのまにか 大人になっていて


いつのまにか ここまで来てしまった


 
 

それに気付いたとき


僕はやっとのことで空を見上げた


それは懐かしさに満ちあふれていて


僕の目には少し眩しすぎた


 
 

急いでバス停まで走ったけれど


僕の乗りたかったバスには


もう間に合わなかった


両ひざに手をついた僕の目に


石ころのころがった懐かしい道が


夕日に照らされているのが映っていた


そういえば こんなに走ったのは


何年ぶりだろうか


この胸の高鳴りはなんだろう


 
 

僕はまた歩き出していた


それにしても 僕らに与えられた時間とは


なんて限られたものなんだろう


僕は取り残されてしまったのだろうか


それとも 僕が急ぎ過ぎたのだろうか


いずれにせよ 幸い僕はこうして


自分自身を見つけることができたのだ


僕が僕であるための




1990年2月 kiyosuke



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